CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」を意味しています。近年、環境問題や社会問題に対する取り組みが活発になっており、企業活動に対しても「CSR」に関連する活動が注目されています。
本記事では、CSR(企業の社会的責任)の意味や活動の具体例、活動のメリットやポイント、関連する用語との違いなどを解説します。
CSRとは – 企業の社会的責任を理解しよう
CSRの意味と読み方
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任を意味します。
企業の社会的責任とは、企業が利益を追求するだけではなく、社会的な課題への取り組みや持続可能な開発への貢献を行うべきであるという考え方を指します。
CSRの背景
近年、社会全体で環境問題や社会的課題(貧困、格差、人権など)への関心が高まり、企業にもそれらへの責任や取り組みが求められるようになりました。
また、多くの国や地域で、企業に対するCSRに関連した法や規制が強化され、これらのことを背景として、CSRの注目度が高まっています。
企業は、利益追求だけでなく、社会的な影響や持続可能な発展への貢献を考慮することで、企業価値を向上させることが期待されています。
CSRと持続可能な開発との関係性
「CSR」と「持続可能な開発」は、共に社会や環境の課題に対処することを目指しています。
「CSR」は企業が社会的責任を果たすことを意味し、「持続可能な開発」は社会的・経済的・環境的な側面をバランス良く考慮した発展を追求することを目指しています。
両者は共通の目標である社会的・環境的な持続可能性を追求することに繋がっています。
CSRの7つの主要な主題
ISO 26000は、国際標準化機構(International Organization for Standardization、ISO)が発行した、社会的責任に関する国際的なガイドラインです。ISO 26000は、企業や組織が社会的責任を遵守するための指針を提供しており、企業の社会的責任(CSR)に関して7つの中核主題を定めています。
- 組織統治
組織のリーダーシップ、透明性、倫理的な原則の遵守、ステークホルダーとの関係構築など、組織のガバナンスに関する責任と活動を扱います。 - 人権
人権の尊重、平等な機会、労働者の権利、差別の防止、労働条件の改善など、人権に関する責任と活動を扱います。 - 労働慣行
適切な労働条件、労働時間、雇用の維持・創出、労働組合の自由、労働安全衛生の確保など、労働慣行に関する責任と活動を扱います。 - 環境
環境への影響の最小化、エネルギー効率の向上、廃棄物削減、環境への配慮、自然資源の保護など、環境に関する責任と活動を扱います。 - 公正な事業慣行
不正行為の防止、競争法の遵守、消費者保護、公正な価格設定、広告の透明性など、公正な取引慣行に関する責任と活動を扱います。 - 消費者課題
安全な製品・サービスの提供、消費者情報へのアクセス、プライバシー保護、誠実なマーケティングなど、消費者の利益に関する責任と活動を扱います。 - コミュニティへの参画およびコミュニティの発展
地域の発展支援、地域コミュニティのニーズへの対応、社会的な投資や支援、文化・歴史的遺産の保護など、地域社会への貢献に関する責任と活動を扱います。
これらの中核主題は、企業が社会的責任を果たすための広範な責任領域をカバーしています。
これらの主題を参考にしながら、自社のCSR戦略や活動を計画・実施する際のガイドラインとして活用しましょう。
CSR活動のメリットとデメリット
CSR活動のメリット
- 従業員満足度の向上
企業のCSR活動は、ステークホルダー(従業員、顧客、地域社会など)の関与を促進し、満足度や忠誠心を高めることができます。社会的なニーズや関心事に対応する取り組みは、従業員との良好な関係構築および満足度の向上につながります。 - 企業イメージの向上
CSR活動は企業の社会的責任を示し、企業の信頼性やイメージを向上させることができます。消費者や顧客は、企業が社会的な課題に対して積極的に取り組んでいる姿勢を好意的に受け止めることがあります。
CSR活動のデメリット
- コストがかかる
CSR活動を行うためには通常の運営費とは別に追加の費用が発生します。社会的課題への取り組みや持続可能な開発を続けるためには少なくない費用がかかり、収益性や利益に一時的な影響を及ぼす可能性があります。 - 短期的な利益への影響
CSR活動は企業の社会的責任を追求するものですが、一方で企業の利益追求も重要です。CSR活動においては、社会的な目標と経済的な目標のバランスを取ることが求められます。一部のステークホルダーの利益を優先することが、他の利益関係者との関係や企業の競争力に影響を及ぼす場合があります。
CSRと関連する用語との違い
CSRと関連する用語との違いを理解することは、企業の社会的責任についてより深く洞察する上で重要です。以下では、CSRと関連する用語との相違点に焦点を当てて説明します。
CSR | 企業が経済的な活動に加えて、社会的な責任を果たすべきであるという考え方 |
CSRの観点において、企業は利益追求だけでなく、社会的な課題への取り組みや持続可能な開発への貢献を行うことが求められます。
CSRは、企業の利害関係者との関係を重視し、倫理的な行動や社会的な価値創造を追求することが目的です。
CSRとサステナビリティ(Sustainability)の関係性
サステナビリティ | 長期的な持続可能性を追求するための総合的なアプローチ |
サステナビリティの観点では、持続可能な開発目標(SDGs)に基づいて、経済的な成長、社会的な課題への取り組み、環境への配慮をバランス良く考慮することが重要です。
サステナビリティは、企業や組織が持続可能な社会と環境を実現するために、継続的な改善と戦略的な取り組みを行うことが目的です。
CSRとサステナビリティは共通点を持ちながらも、CSRは主に企業の行動と社会的な責任を強調し、サステナビリティは長期的な持続可能性を追求する社会的な目標を強調しています。
したがって、企業がCSRを実践する過程でサステナビリティの原則や手法を取り入れることが一般的です。
CSRとSDGs(Sustainable Development Goals)との関係性
SDGs | 国連が採択した2030アジェンダにおける持続可能な開発目標 |
SDGsは17の具体的な目標と169のターゲットからなり、持続可能な開発を推進するための包括的な枠組みです。SDGsは、貧困の撲滅、教育の普及、ジェンダー平等、クリーンな水と衛生、持続可能なエネルギーなど、幅広い社会的および環境的な課題に取り組むことを目指しています。
CSRは、企業が負うべき社会的責任を指す一方で、SDGsは国際的な持続可能な開発の目標を示しています。
しかし、CSRの取り組みは、SDGsの目標と一致しており、CSRの活動は、企業の社会的責任を果たす一環として、SDGsの達成に寄与します。
例えば、企業が環境への配慮や社会的課題への取り組みを行うことで、SDGsの関連目標である「持続可能な消費と生産」や「貧困削減」の貢献に繋がります。
企業がCSRの原則に基づいて行動し、SDGsとの一致性を考慮することで、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを行うことが可能です。
CSRとコンプライアンス(Compliance)
コンプライアンス | 企業が法的な要件や規制に適合し、遵守すること |
企業は法的なコンプライアンスを守るために、国内外の法律や規制を遵守し、法的なリスクを最小限に抑えるよう努める必要があります。例えば、労働基準法や環境保護法などの法的要件への適合や、企業ガバナンスの強化などがコンプライアンスの一環となります。
CSRは法的要件以上の取り組みであり、企業の自主的な社会的責任に関連します。
コンプライアンスは法的な要件の遵守を重視する一方、CSRは社会的な課題への積極的な対応を追求します。
ただし、CSRとコンプライアンスは相互に関連しています。法的な要件を遵守することは、企業の信頼性や持続可能性に寄与し、CSR活動の基盤となることがあります。CSR活動は、コンプライアンスの範囲内で行われることが一般的であり、法的な要件を超えた倫理的な行動や社会的な価値の創造を追求します。
CSR活動を推進する上での注意点
自社が取り組むべきCSR活動を検討するには、以下の6点を吟味する必要があります。
- ステークホルダー(利害関係者)を明確にし、彼らのニーズや関心事を分析する
従業員、顧客、株主、地域社会など、重要なステークホルダーは誰であるのかを明確にし、彼らが望む社会的な貢献や課題解決に焦点を当てることが重要です。 - 自社のコアビジネスとCSR活動の関連性を評価する
自社の強みや業績に直結する社会的な課題や価値創造の機会を見つけることが重要です。社会的な課題を解決するビジネスモデルや製品、サービスの提供に注力することで、CSR活動がビジネスにポジティブな影響を与える可能性があります。 - 持続可能な開発目標(SDGs)との関連性を評価する
SDGsは、社会的な課題への取り組みや持続可能な開発を推進するための枠組みです。自社の活動や事業がどのSDGsに寄与し得るかを評価し、重点的に取り組むべき目標を特定します。 - 環境への配慮を示す
自社の環境影響を評価し、環境保護や資源効率の向上など、環境への貢献に焦点を当てることが求められます。省エネルギーや再生可能エネルギーの利用、廃棄物管理、環境への影響を低減する取り組みなどが考慮されます。 - 外部の組織やパートナーとの連携を検討する
他の企業、NGO、地域団体などと協力し、共同で課題解決や持続可能なプロジェクトを推進することで、より大きな影響を生み出すことができます。 - 定量的・定性的な指標を設定し、CSR活動の効果を評価し報告する仕組みを整える
透明性のある報告体制を確立し、利害関係者に対して成果を示すことが求められます。
これらの要点を考慮しながら、自社のビジネスモデル、戦略、利害関係者との関係を考え、持続可能な社会への貢献とビジネスの成長を両立させるためのCSR活動を検討してください。
CSR活動の事例
日本企業における実際のCSR活動の事例をいくつか紹介します。
- トヨタ自動車の持続可能なモビリティ
トヨタ自動車は、環境への負荷を軽減し、持続可能なモビリティの実現に取り組んでいます。エコカーや電気自動車の開発、燃費向上技術の採用、再生可能エネルギーの利用など、環境への配慮と持続可能な交通システムの構築に注力しています。 - ユニクロの社会的貢献活動
ファストリテイリングの一翼を担うユニクロは、地域社会への貢献を重視しています。特に、教育や子供の支援に力を入れており、図書館や学習支援プログラムの設立、学校建設支援、災害支援など、地域コミュニティの発展に貢献しています。 - ソニーの環境保護とエネルギー効率
ソニーは、環境保護とエネルギー効率の向上に取り組んでいます。エネルギー効率の高い製品の開発、再生可能エネルギーの利用、CO2排出削減目標の設定など、環境への負荷を低減する取り組みを行っています。 - ローソンのフードロス削減
ローソンは、食品ロス削減に取り組んでいます。期限切れ商品の寄付、残食を減らすための取り組み、食品ロスの計測と分析など、持続可能な食品供給の実現に向けた取り組みを行っています。 - 三菱商事の地域開発と教育支援
三菱商事は、地域の発展と教育支援に力を入れています。地域のインフラ整備や地域産業の振興、教育施設の建設や奨学金制度の提供など、地域コミュニティの発展と若者の教育支援に貢献しています。
これらは一部の事例であり、日本企業は様々なCSR活動を展開しています。それぞれの企業は、自身のビジネスモデルや価値観に基づいて、特定の社会的課題に対して取り組み、地域社会や環境への貢献を実現しています。
その他のCSR活動の例
- 環境保護と持続可能な資源利用
・再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の改善
・温室効果ガスの排出削減やクリーンテクノロジーの開発
・水資源の保護や浄化技術の採用
・廃棄物削減やリサイクルの促進 - 社会的貢献と地域への支援
・地域の教育施設や福祉施設への寄付や支援
・雇用創出や地域の労働条件の改善
・地域の文化や歴史的遺産の保護や復元
・災害救援活動への参加や復興支援 - 社会的包摂とダイバーシティ推進
・ジェンダー平等を推進するプログラムや取り組み
・バリアフリー環境の整備や障害者支援プログラムの実施
・少数派やマイノリティの権利尊重や包摂を促進する取り組み
・社会的格差の是正や貧困層の支援 - 倫理的なビジネス慣行と透明性の確保
・コンプライアンスプログラムの強化と法的要件への遵守
・不正行為や汚職の防止策の実施
・適正な労働条件や人権の尊重に関する方針の策定
・透明性の高い報告とステークホルダーとの積極的なコミュニケーション - イノベーションと社会的課題の解決
・社会的な課題に対する新たなビジネスモデルや製品の開発
・教育や医療分野への技術やサービスの提供
・スタートアップや社会企業の支援や投資
・ボランティアプログラムや社員ボランティア活動の推進
これらの事例は、CSR活動のほんの一部です。実際の企業や組織の取り組みは多岐にわたります。企業は自身のビジネスモデルや価値観に合わせて、特定の社会的課題や地域のニーズに対応するCSR活動を選択し、戦略的かつ効果的に実施することが重要です。
CSRの重要性と企業価値への影響
いかがでしたでしょうか。本記事では、CSR活動の定義やメリット、検討方法、具体例などをお伝えしました。社会的課題、環境問題など、世界規模の問題については、あらゆる人が国や地域をまたいで解決策を模索しています。今後は企業の広報活動も、プレゼンスを最大限に発揮するためには、社会的な活動やコンプライアンスなどを重視する姿勢を積極的に発信していくことが求められます。
しかし、企業がきちんとCSR活動をし、活動情報を開示していくには、どうしても多くのコストやリソースが必要になります。自社で行える取り組みと、世の中で求められているニーズをすり合わせ、できることから始めていきましょう。さまざまなステークホルダーを相手に、社会貢献と企業ブランディングにつながるCSRについて考え、広報PR活動につなげてみてはいかがでしょうか。
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