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リスキリングとは|DX時代を勝ち抜く新たなスキル習得と必要性 ノウハウ

リスキリングとは|DX時代を勝ち抜く新たなスキル習得と必要性

昨今にわかに注目を集めているワード「リスキリング」。2022年の「ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされ、耳にする機会も多いのではないでしょうか。リスキリングとは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するため、新しい知識やスキルを学ぶことを指す用語。英語で「Reーskilling」とつづるように、‟学び直し”とも言える言葉です。この記事では、その定義や必要性、導入例、課題について解説します。

リスキリングの定義と概要

リスキリングの定義

リスキリングとは、経済産業省による「デジタル時代の人材政策に関する検討会」の資料において、次のように定義されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」「近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている」と補足されています。

また、「経済産業省の取組」資料では「デジタル社会においては、すべての国民が、役割に応じた相応のデジタル知識・能力を習得する必要がある。現役のビジネスパーソンの学び直し(=リスキリング)が重要」だと提言しています。

参考資料

経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会/資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf

経済産業省「経済産業省の取組」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801000/000894640.pdf

DXの推進とリスキリング

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業内のデジタル化を進める取り組みのこと。AI等の最新技術を取り入れることで、ビジネスにおける競争上の優位性を確立することが目的です。

DXを推進する企業は増加しており、DX推進のための教育=リスキリングと見られがちですが、必ずしもそうとは言えません。とは言え、現場で実際に取り入れるには、プログラミング、データ分析、サイバーセキュリティなどの技術に関する知識を習得する必要があります。そのため、DX化のための新たなスキル習得にとりわけ注目が集まっています。

リスキリングと似ている言葉とその違い

リスキリングと似ている言葉として、「リカレント教育」、「アンラーニング」、「アップスキリング」が挙げられます。それぞれ意味合いの違いを見ていきましょう。

リカレント教育

リカレント(英語:Recurrent)とは「繰り返す」、「周期的」の意味。リカレント教育とは、就労と教育のサイクルを繰り返すことを指し、一旦仕事から離れ、別の教育機関での学び直しを意味しています。一方、リスキリングの場合は、仕事から一旦離れるのではなく、業務と並行しながら必要なスキルを身に付けていくことを言います。また、リカレントは従業員が‟自主的に”別のスキルを学ぶのに対し、リスキリングでは企業側が学びの場を提供するという側面があります。

アンラーニング

アンラーニングは「学習棄却」と呼ばれ、これまで学んできた知識を捨て、新しく学び直すことを指します。ビジネスの場においては、既存の認識やルーティン、価値基準を捨て、新しいスタイルやルールを取り入れること。“学びの修正”とも言える概念です。

アップスキリング

アップスキリングとは、すでに保有しているスキルを更新・強化すること。変化し続けるビジネスの現場やテクノロジーに対応するため、既存スキルをアップデートすることを指します。リスキリングは既存スキルとは別に、新たなスキルセットを“再構築”することですので、意味合いが異なります。

リスキリングの定義と概要

リスキリングが必要とされる背景

リスキリングが必要とされる背景には、以下の理由が挙げられます。

  • 働き方の変化
    2019年4月から順次施行されている「働き方改革関連法」。ペーパーレス化や残業時間の上限設定、育児休暇・有給休暇の取得促進など、個々人の事情に合わせた働き方ができるようさまざまな制度改革がなされました。
    そこに新型コロナウイルスの流行が拍車をかけ、働き方が急激に変わったケースも多くみられます。例えば、社内勤務からテレワークに変わったり、顧客との商談が対面からオンラインへ移行したり。必然的に新たなスキルを身につけなければ対応できない状況が生まれたことも、リスキリングが注目されるようになった理由の一つです。

  • DXの浸透
    先にも述べましたが、DXが浸透し推進する動きが広がっていることも理由に挙げられます。DXを推進している企業は少なくないものの、現場で実践する従業員はそれを活用するスキルが必要です。さらに、AI技術は日進月歩であり、ChatGPTに代表される生成AI(※)も次々に創出されています。聞きなじみのないワードやスキルにも対応する必要に迫られることも事実です。

    ※生成AI:生成系AI、ジェネレーションAIとも言われ、さまざまなコンテンツを生成できるAIのこと。学習済みのデータを活用して、オリジナルデータを生成します。

  • 国内外でリスキリングへの宣言
    2020年に開催された世界経済会議(ダボス会議)で「リスキリング革命」が議題に上がり、「2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする」と発表されました。
    日本国内でも、経団連で2020年11月に発表された「新成長戦略」の中で、リスキリングの必要性について触れています。また、2022年10月に政府が「リスキリングの支援に5年間で1兆円を投じる」と表明したことも大きく影響しています。このように国内外問わず、リスキリングに関する宣言がされてきたことも注目されるようになった背景と言えるでしょう。
リスキリングが必要とされる背景

リスキリングを導入するステップ

では、実際に社内においてリスキリングを導入するステップについて解説します。

経営戦略から必要なスキルを明確化

自社の業績や事業内容などのデータをもとに現状とゴールを把握。経営戦略の実現に向けて必要なスキルの洗い出しを行います。また、従業員が現在有しているスキルを可視化し、必要なスキルを明確に決定します。

教育プログラムの検討・決定

続いて、教育プログラムを検討します。各従業員が必要なスキルを習得できるよう、社内研修やオンライン講座、e-ラーニングなど、さまざまな教育手法の中から最適なプログラムを決定します。従業員が通常の業務を遂行しながら無理なくスキル習得に臨めるよう、計画的かつ効率的に学べる仕組み、環境を整えることも大切です。

リスキリングの実施

教育プログラムを決定し、環境が整ったら、従業員に取り組んでもらいます。学習を進める際は、各人の学習進捗が一覧で確認でき、社内でプログラムに参加する誰もが見られる仕組みがあると良いでしょう。他者から見られることや、ほかの人の進捗を見ることで学習への動機付けになるメリットがあります。ただし、就業時間外に学習することになると、従業員の負担が大きくなり、かえってモチベーションが下がる要因にもなるため注意が必要です。

新たに習得したスキルの活用・実践

学習した知識やスキルは、実践できる場を設けることが重要です。実際の業務中に活用できればなお良いでしょう。実践することでスキルの習熟度が上がり、応用力も身についていきます。また、習得したスキルの内容によっては、ほかの従業員もノウハウを共有できるようマニュアル化することも効果的です。

企業におけるリスキリングの取り組み事例

国内企業におけるリスキリングの取り組み事例を紹介します。

  • 日立製作所の事例
    日立製作所では、国内グループ企業の全社員約16万人を対象に、DX基礎教育を実施。日立グループの社内教育を担う「日立アカデミー」が、基礎教育のための研修「デジタルリテラシー エクササイズ」をeラーニング形式で提供しました(2020年9月11日 日経XTECHより)。これに引き続き、AIを活用した教育システム「学習体験プラットフォーム(LXP)」をグループ全体で導入。積極的かつ戦略的な人材育成に取り組んでいます。
  • 富士通の事例
    「ITカンパニーからDXカンパニーへ」を提唱している富士通。2020年度の経営方針説明において、「社会・お客様への提供価値の創造と富士通自身のDX企業への変革のため必要な投資を積極的に遂行」するとして、5年間で5,000~6,000億円を投じると発表しています。
    社内ポータルサイト「FUJITSU Learning Experience(FLX)」を拡充させ、社員が自身に必要なスキルを能動的に学べる仕組みを整備。最先端のDXテクノロジーからAI、コンピューティング、クラウドなど関心領域に合わせて選択し、受講できるようにしています。
企業におけるリスキリングの取り組み事例

リスキリング導入の課題

このように、大企業をはじめ多くの企業が社員のリスキリングに取り組んでいます。導入が進む一方で、見えてきた課題もあります。

スキルの可視化

リスキリングには、スキル(現有スキルと、将来必要になるスキルの双方)の可視化が不可欠。しかし、日本企業ではスキルデータやスキルマップをうまく活用できていないケースが多く見られます。今後必要となるスキルや不足している分野を特定するため、スキルを可視化する仕組みづくりが重要です。

教育プログラムの検討

習得するスキルを“仕事で使えるレベル”に高められる有用なコンテンツがどこにあるのかを見極めることも課題です。加えて、eラーニングや座学だけの教育プログラムで、果たして実践で使えるスキルを獲得できるのかも考える必要があります。これについては、受講後の現場経験が最も大切です。

リスキリングに対する理解不足

全社的な取り組みとなるリスキリングには、従業員個々人の意識改革、必要性への理解も大切です。「リスキリングをしなければ、企業内で価値を生み続ける人材として生き残れないこと」を、いかにうまく浸透させられるかがカギ。理解を得るためには、どこをスキル習得のゴールとするのかという目標設定や、リスキリングによって新しい職務の可能性が広がることを具体的に提示することが有効です。

これらの課題を見据えて人材戦略を立て、リスキリングを導入することで、従業員の成長や満足度の向上に寄与できます。ひいては企業全体の成長につながることが期待されています。

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