給与計算とは、法令改正や制度変更による対応が頻繁に必要で、正確かつ効率的に行うには専門知識が求められる作業です。業務の煩雑さから、近年、アウトソーシングを検討する企業も増加しています。当記事では、給与計算をアウトソーシングするメリットを詳しく解説し、外部委託をおすすめする企業や、代行業者選定のコツをご紹介します。
給与計算のアウトソーシングとは
2000年代に入りビジネス競争が激化する中、企業は本業に専念し、バックオフィス部門の業務は外注するというビジネスモデルが浸透するようになりました。給与計算業務についても例にもれず、アウトソーシング・代行を成長戦略として位置づける企業も増加しています。
給与計算は、非常に複雑で時間がかかるうえ、ミスが許されない重要な業務。これを切り出してアウトソースできれば、効率化とコスト削減につながります。この章では、給与計算アウトソーシングの業務範囲と利点について、ご説明します。
給与支給額の計算
毎月の給与計算業務の代行です。これには、給与額を算出するために必要となる勤怠データの管理も行います。例えば、タイムカードの集計、時間外労働の管理、残業代の計算など。ほかに、社会保険料や雇用保険料、所得税など控除額の計算も含まれます。
また、月々の給与計算だけでなく、遡及計算(支給額の相違による再計算)や、退職金の計算業務が含まれることがほとんどです。
賞与の計算
賞与の計算も行います。給与計算と同様に、労働法に準じた正確性が求められる作業ですが、賞与の場合は特に煩雑です。勤続年数や、企業独自の評価・査定基準に応じて計算する必要があるからです。
賞与の支払いは年2回が一般的ですが、特に冬のボーナス時は年末調整の時期と重なるケースが多く、担当者の負担たるや相当なものでしょう。これをアウトソースすることで、大幅な効率化が図れます。
振込データ・給与明細の作成
給与振込データの作成を代行できます。給与振込のデータを作成する際に、振込先口座番号の入力ミスや金額の誤入力が発生すると従業員の信頼を損ねる可能性があります。アウトソースすることで、自社担当者の手作業によるエラーというリスクの軽減につながります。
専門家が専用システムやソフトウェアを使用してデータ処理することで、ミスの発生率を低く抑え、全体の業務フローがスムーズに運びます。
給与明細の作成も委託できる業務です。給与明細は、従業員の同意があれば電子化が可能で(2006年税法改正)、この場合は明細のWEB配信作業も行えます。
年末調整
年末調整の代行は、給与計算代行のオプションとして選択することが一般的です。給与計算のアウトソースは行わず、年末調整業務を単体で委託するケースもあります。
年末調整業務は、税法に基づく手続きであり、誤りが発生すると企業の信頼を損なうだけでなく、従業員に対しても不利益が生じる可能性があるものです。例えば、所得税の計算ミスがあると追加徴収されるケースもあり、後で確定申告の手続きを行わなければならなくなります。
繁忙期が限られるうえ、最新の税法や関連法令の知識が求められる年末調整の手続きは、人事労務の担当者には大きな負担です。当業務をアウトソーシングすることで効率化と信頼性の向上が期待できます。
住民税の更新
住民税の年度更新は、毎年5月から6月にかけて行われます。年末調整と同様に期間が限定される業務であるため、給与計算代行のオプションとして付帯するケースが一般的です。
住民税は、2024年の定額減税制度のように年ごとに税率や計算方法が変更されることがあり、それに対応するには常に最新の法令知識が必要となります。
また、地方税である住民税は、従業員の居住地である市区町村とのやり取りの中で、特別徴収額通知書など紙媒体を大量に扱うため、多くの時間と労力を要します。給与計算業務の一環として、特別徴収の給与天引き対応も合わせて委託すれば効率的です。
・度重なる法改正によって、給与計算担当者の業務負担が大きい
・従業員の増加、事業拡大により、人事労務業務全体の対応が難しい
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給与計算アウトソーシングのメリット
コスト削減
給与計算のアウトソーシングにより、経営コストの削減が可能です。各企業が抱えるリソースの問題や人的資源の限界を考慮すると、アウトソーシングによって得られる経済的なメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
担当者の教育育成にかかる人的コスト
給与計算は専門的な知識が必要であり、業務引き継ぎや担当者のスキルアップには多くの時間とコストがかかります。
アウトソーシングを利用することで、社内の担当者を教育育成するコストを削減できます。例えば、新しい担当者を採用して給与計算に関する研修を行う場合、教育の時間や研修費用が発生します。教育育成にかかるコストを削減できれば、そのリソースを他の重要な業務に振り分けることが可能です。
システム・ソフトウエアにかかるコスト
業務内製化の場合、高額な給与計算システムやソフトウエアの定期的なアップデートにかかる費用が必要になりますが、アウトソーシングではこれらが不要となります。例えば、給与計算専用のソフトウエアは購入費だけでなく、サポート契約費や保守費用など定期的なランニングコストが発生します。
アウトソーシングの場合、契約書に基づく料金で済むためコスト管理も容易になります。結果として、システム・ソフトウエア費用の負担を減らし、コストを最適化することができます。
専門知識の活用と法改正への対応
給与計算とは、専門的な知識と法改正への迅速な対応が求められる業務です。アウトソーシングを活用すれば、給与計算の精度が向上するだけでなく、自社で法改正情報をキャッチアップする必要がなくなり、法改正にもスムーズに対応できます。
専門家による給与計算の精度向上
専門家による給与計算の精度向上が期待できます。専門的な知識を持つプロフェッショナルが担当するため、通常では見逃してしまうような細かなミスも防げます。
例えば、各種手当や控除額の変更や入力ミスの発覚により遡及計算が必要となる場合、これにかかる処理は大変煩雑です。アウトソーシングで専門家に依頼することで複雑な計算処理を任せることができ、給与計算の精度が向上します。
給与が正確に計算されていることは、従業員の安心感、エンゲージメントの向上にもつながります。
最新法令に基づく計算の確実性
法改正への迅速な対応が可能です。法令に準拠し、給与を正しく計算されていない場合、コンプライアンス違反につながり、企業の信頼性が損なわれます。
例えば、社会保険料や源泉徴収税率が変更されたり、2024年のように定額減税制度が適用されたりした場合には、それに即した計算が求められます。これを怠ると後に過不足分の支払い作業が発生する可能性があります。
アウトソーシングであれば、最新の法令に準拠した給与計算がなされるため、自社で法改正情報をキャッチアップする必要はありません。法令違反のリスク回避、企業のコンプライアンス維持につながります。
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コア業務への集中
コア業務への集中は、企業の成長や競争力の向上が期待できます。これには非コア業務を効率化することがカギとなります。給与計算アウトソーシングは、ルーティン作業の負担を減らし、社員がより重要な業務に注力できる環境を作り出すことが可能です。
給与計算の時間削減と効率化
自社内で給与計算を行う場合、多くの処理や確認工程が必要となり、多大な時間を消費しますが、アウトソーシングを利用することでこれらの時間を削減できます。
例えば、月末の給与計算に1週間かかっていた業務が、アウトソーシングにより数日に短縮できれば、他の重要な業務に時間を割くことができます。これは全体の業務効率向上に直結します。
ルーティン作業の負担軽減
給与計算は毎月繰り返される作業であり、その都度正確に処理するには多くの時間と労力がかかるものです。具体例としては、毎月の就業時間の集計や、各種手当や控除の計算、給与明細の作成といった定型業務が挙げられます。これらルーティン作業はアウトソーシングすることで負担を大幅に減らせます。
社員が本来取り組むべきコア業務にリソースを投入できれば、組織全体の仕事の質が向上し、企業のパフォーマンスが向上します。
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属人化の予防とBCP対策
給与計算のアウトソーシングは、属人化を防ぐ有効な手段です。特定の担当者に職務が偏ると、その担当者が欠勤や退職をした場合に業務が滞るリスクが高まります。アウトソーシングを利用することで、業務の知識やノウハウが外部に分散し、こうしたリスクを回避できます。
属人化を防ぎ担当者の負担軽減
給与計算業務の属人化を防ぐことで、担当者への過度な負担を軽減できます。属人化が進むと、特定の従業員に業務が集中し、その人がいないと業務が止まるリスクが高まります。例えば、専任担当者が一人で行っていた場合、急病で欠勤すれば給与計算が期日に間に合わず、給与の支払いが遅れる可能性があります。
属人化を防止することで、業務の継続性を保ちつつ、担当者の負担を平準化できます。これによって、組織全体の業務効率も向上します。
リスク管理とBCP対策
アウトソーシングはリスク管理とBCP(事業継続計画)対策にも寄与します。災害や緊急事態が発生した際に、業務を迅速に再開するためには、外部のリソースを活用することでリスクを分散し、事業の継続性を高めることが重要です。もし地震など大規模災害の影響でオフィスが使用できなくなり、自社での給与計算が不可能になっても、アウトソーシングサービスを利用している場合、そのサービス提供者が代替オフィスやリモートでの業務を行うため、給与計算業務の中断を防ぐことができます。
給与計算アウトソーシングのデメリット
給与計算アウトソーシングは、多くのメリットをもたらしますが、デメリットも存在します。導入を検討する際には、デメリットも理解しておくことで、より適切に判断することができるでしょう。
自社にノウハウの蓄積は期待できない
アウトソーシングにより、社内にノウハウが蓄積されにくくなります。給与計算業務を外部の専門家に任せるため、自社内での経験や知識が得られないからです。例えば、法改正に伴い給与計算方法が変更されても、自社で学習しなくても済むため、スキルがアップデートされることはありません。
ノウハウの蓄積は期待できませんが、その分ほかのコア業務に集中することができます。
業務負担がなくなるわけではない
給与計算をアウトソーシングしても、完全に業務負担がなくなるわけではありません。確かに、給与計算の一部を外部に委託することで、自社内で処理する作業は減少します。しかし、アウトソーシング先との連携や情報提供、管理業務など新たな業務が発生するため、完全に解放されるわけではありません。アウトソーシングの精度を保つために、社内でチェック体制を整えましょう。
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情報漏えいのリスク
給与計算は、従業員の個人情報や企業の機密データにも触れる作業であり、情報漏えいのリスクが伴います。過去に、アウトソーシング会社の従業員が顧客情報を不正に持ち出す事件が発生したことがありました。ひとたびこのような事件が起きれば、企業の信用は大きく損なわれてしまいます。情報漏えいのリスクを理解した上で、適切な情報管理とセキュリティ対策を講じることが大切です。
こんな課題感を持つ企業には代行がおすすめ
給与計算のアウトソーシングは多くのメリットがあり、デメリットもあることをご説明してきました。では、どのような状況の場合に導入するとよいのでしょうか。この章で詳しく説明します。
人事労務の専門知識を持つ担当者がいない
給与計算は、人事労務に関する専門知識を兼ね備えた人材でなければ、法改正や各種規定の変更があっても正確に対処できず、従業員の待遇に誤りが生じることがあります。また、計算ミスにより、従業員からのクレームや信頼失墜につながる可能性もあります。
人事労務の専門知識を持つ担当者がいない企業は、給与計算アウトソーシングの利用を積極的に検討すると良いでしょう。
担当者がメイン業務に注力できていない
給与計算を人事部や総務部の従業員が兼任で行っているケースが往々にしてあります。給与計算業務に追われ、メインの業務にエネルギーを注ぐことができない状況が考えられます。人事担当者や管理者が新しい採用戦略や人材育成プランを考える時間が取れないのでは、組織全体の成長に対する障害となりかねません。
このような状況を改善するためには、給与計算をアウトソーシングして担当者の負担を減らすことが必要になります。
給与計算の担当者が1名しかいない
中小企業では、給与計算業務を一人で担っていることがあります。担当者が1名しかいない状況では、休職や退職をした場合に業務が滞る恐れがあります。代わりに処理を行う人がいないため給与計算が遅延し、社員の給与支給に影響を及ぼすことになります。
アウトソーシングであれば、急な離職が発生しても、代行サービス事業者が持つリソースによって業務はスムーズに遂行されます。より安定した給与計算業務を維持するためには、アウトソーシングの利用を検討することが推奨されます。
給与計算代行サービス選定のポイント
給与計算アウトソーシングを検討する際には、コスト削減や効率化のみに注目するのではなく、サービス内容や導入実績、セキュリティ対策なども考慮することが重要です。この章では、給与計算代行サービスを選ぶ際に考慮すべきポイントについて解説します。
経験・導入実績
給与計算アウトソーシング業者を選定する際には、そのサービス事業者がどれだけの経験と導入実績を持っているかが非常に重要です。導入実績は単にデータとして見るだけでなく、その業者が実際にどのような問題に対してどのように対応してきたのかといった具体的な事例を確認することが、より信頼性の高い選定につながります。
経験と実績豊富な業者を選ぶことで、給与計算業務における精度と信頼性を高め、従業員の給与計算に関する不安の解消にも寄与します。
BODの給与計算代行サービス:「お客様の声」掲載中
柔軟性・対応スピード
柔軟性と対応スピードの高さは、アウトソーシングサービス選定の際に見逃してはならないポイントです。具体的には、給与計算の引き継ぎやデータの更新が迅速に行われるか、法改正に対応した最新のシステムを導入しているか、従業員の勤怠管理や賞与の計算なども遅滞なく行えるかといった点をチェックします。これらがしっかりしていると、万一のトラブル時にもスムーズに対応してもらえるため、安心して業務を任せることができます。
サービスの質だけでなく、その対応力についても評価を行い、最適なアウトソーシング先を選びましょう。
情報管理・セキュリティ対策
給与計算業務を外部にアウトソースする場合、情報管理とセキュリティ対策は極めて重要です。社員の個人情報や給与データは機密性が高く、これを不正アクセスや漏えいから守る必要があります。
厳格なアクセス制限やデータ暗号化を導入しているか、社内で定期的にセキュリティ対策を更新し、最新の法令や技術に基づく対策を講じているかを必ず事前に確認しましょう。こうした対策が徹底されていれば、情報セキュリティリスクを大幅に抑えることができます。
情報管理とセキュリティ対策が万全なアウトソーサーを選定することは、従業員や関連ステークホルダーからの信頼を確保するために大切です。
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