月の途中で入社した社員の場合、給与計算は日割りにするのが一般的です。1日から入社した場合でも、給料の締め日によっては月の途中となるケースもあります。この記事では、日割り給与の具体的な計算方法やその際の注意点について解説します。
中途入社の場合、給与は日割りが基本形
月の途中で入社した場合、初月の給与支払いは日割り計算で行うのが一般的です。給与の日割り計算については、労働基準法などの法的な定めはありません。そのため企業ごとに基準や計算方法が就業規則で規定されています。
万が一、就業規則で計算方法が定められていない場合は、上長、人事労務部門の管理職者と相談し「どのように日割り計算するのか」を明確にしておく必要があるでしょう。
日割り給与の計算方法とは
給与を日割りで計算する方法には、3パターンあります。前述の通り、労働基準法では日割り計算についての定めはないため、企業はそれぞれの判断で計算方法を決めることができます。
この項では、それぞれのパターンの具体的な計算方法とメリットについてご説明します。
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暦日を基準とする方法
社員が入社した月の暦日(カレンダー上の日数)を基準として計算する方法です。30日と31日の月があること、2月はうるう年の場合があることに注意しましょう。
基本給 ÷ 当該月の暦日 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 4月に10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 30日(4月の暦日) × 10日 = 66,667円
暦日を基準として計算する場合、31日の月がある一方、2月は28日(29日)であるため、入社月によって公平ではなくなります。ただし計算が簡単なため、ミスが起きにくいことがメリットです。
当該月の所定労働日数を用いる方法
社員が入社した月の所定労働日数(会社カレンダーの定めによる日数)を基準として計算する方法です。
基本給 ÷ 当該月の所定労働日数 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 所定労働日数21日の月に10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 21日(所定労働日数) × 10日 = 95,238円
暦日基準での計算方法と比べて、こちらの方が支給額が高くなるのは、休日の日数を含んでいないためです。これは給与を受け取る側にとってメリットのある方法と言えます。ただし所定労働日数は、祝日や年末年始休暇等の関係で月ごとに日数が変化するため、何月に入社するかによって支給額は変動します。
月平均の所定労働日数を用いる方法
社員が入社した月に関係なく、月平均の所定労働日数を使う方法です。これには、まず月平均の所定労働日数を求める計算が必要になります。
【月平均の所定労働日数の求め方】
年間所定労働日数(会社カレンダーの定めによる)÷12カ月=月平均の所定労働日数
年間所定労働日数が245日の場合、245日÷12カ月= 20.4日が月平均の所定労働日数になります。
基本給 ÷ 月平均の所定労働日数 × 出勤日数 = 日割り給与支給額
※基本給20万円の社員/ 月平均の所定労働日数20.4日/ 10日間出勤した場合※
20万円 ÷ 20.4日(月平均の所定労働日数) × 10日 = 98,040円
この方法の場合、月ごとのばらつきがないため公平な日割り計算が可能です。つまり、何月に入社した社員でも平等に給与計算できることがメリットと言えます。
ただし、月平均の所定労働日数を求める場合、小数点がついて計算がややこしくなりミスをする可能性もあります。日割り計算をする際の法的な基準はないため、「何月に途中入社しても、日割り計算する際に‟月の日数”は30日で」、「25日で」などと、企業独自の計算方法を決めることもできます。そうすると計算はシンプルで間違いにくくなりますし、どの社員に対しても公平性を保つことができます。
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日割り計算の際、各種手当に関する注意点
給与の日割り計算をする際、基本給以外の各種手当をどこまで日割りの対象に含むかも就業規則で定めておくべきポイントです。
手当については日割りにする明確な根拠がないため、途中入社であっても満額支給するのが良心的と言えます。とは言え、手当の性質によって、日割りの対象とするのかどうかを決める方法もあります。
【手当の性質】
・職務に関する手当:職務手当、能力手当、役職手当など
・生活に関する手当:家族手当、子女教育手当、住宅手当など
つまり、職務の提供を前提とする手当は日割り計算の対象に含み、生活の負担を補う福利厚生的な意味合いの手当については、日割りする合理的な理由がないため満額支給するという方法です。
通勤手当の取り扱い
通勤手当については、コロナ禍以降テレワーク導入が進んでおり、出社日数に応じた交通費を支給する企業も増えているようです。そのため、通勤手当は月額固定なのか、出社日数に応じて支給なのかを規定しておく必要があります。月額固定の場合には、途中入社の際に日割りの対象とするのかどうかを決めておきましょう。
中途入社以外に日割り給与の対象となるケース
中途採用者が入社する際のほかにも、給与の日割り計算が必要になるケースは考えられます。月の途中で退職する場合、産休・育休、介護休暇に入る場合、逆に復職した場合など。また欠勤や遅刻、早退が多い場合にも適用できます。
給与の日割り計算を行うケースは頻繁にあるため、日割り計算に対するルールは就業規則で明確に定めておく必要があります。
就業規則、賃金規程で明確にルールを定めましょう
ここまで述べてきた通り、日割り給与の計算方法は企業が自由に決めることができます。その内容は、就業規則や賃金規定に明記したうえで全従業員へ周知し、適切に運用することが重要です。規約がないと、日割り計算の業務が発生するたびに混乱することになりかねません。また、給与計算業務の担当者が変わるたびに計算方法が変わるようでは、会社と従業員との信頼関係にも大きく影響します。給与計算に関する労使トラブルは深刻化する可能性もあり、こうしたトラブルを未然に防ぐためにも明確なルールを定めましょう。
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