人事書類の保管期間について、頭を悩ませる人事労務担当者の方は多いのではないでしょうか。どの書類をいつまで保管する必要があるのか、法改正情報をキャッチアップしながら把握するのは容易ではなく、業務上の負担にもなりがちです。本記事では、主要な人事書類の保管期間一覧と、効率的な書類管理のポイントをご紹介します。
人事書類とは
人事書類 | 企業の人事・労務業務において必要な情報や手続きを記録・管理するための書類 |
人事書類には、雇用契約書や労働者名簿、賃金台帳、勤怠記録などが含まれ、それぞれ法令に基づいて一定期間の保管が求められます。これらの書類は、従業員との雇用関係を適切に維持し、労働環境を整えるために欠かせないものです。
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人事書類の保管・保存
人事書類の保管・保存は、法的なリスクを避け、企業の信頼性を高めるために不可欠です。人事書類を適切に管理することは、業務効率化やトラブルの未然防止にもつながります。
保管と保存の違い
● 保管:書類をすぐに取り出せるような状態で収納すること
● 保存:社内の保管庫などに長期間閉まっておくこと
細かなニュアンスの違いはありますが、実務ではほぼ同じ意味として使用されることが一般的です。どちらも適切な管理のもとで行うことで、必要な時に迅速に情報にアクセスできるようになります。
人事書類には保存義務がある
人事書類には、法的に定められた保存義務があります。
例えば「賃金台帳」の場合、労働基準法第109条において保存期間は5年と規定されています。この期間内はいつでも確認できる状態で保管しておかなければなりません。
保存義務を守ることは、法令遵守のみならず、会社の信頼性を保つためにも重要です。
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人事書類の保管期間【一覧】
人事書類は、各書類ごとに保管期間が異なるため、それぞれ適切に管理することは容易ではありません。この章では、人事書類の保管期間について一覧形式でまとめます。
書類の種類 | 保存期間 | 起算日 | 根拠 | |
人事労務 | 労働者名簿 | 5年 | 退職、死亡の日 | 労働基準法第109条、労働基準法施行規則第56条 |
雇入れまたは退職に関する書類(雇用契約書、労働条件通知書、履歴書、解雇通知書など) | 5年 | 退職、死亡の日 | ||
出勤簿、タイムカード、労働時間の記録に関する書類 | 5年 | 最後の記入日 | ||
36協定、時間外・休日労働協定届 | 5年 | 協定の有効期限満了 | ||
派遣元管理台帳・派遣先管理台帳 | 3年 | 契約完了の日 | 労働者派遣法37条・42条 | |
雇用保険 | 雇用保険の被保険者に関する書類(離職票、雇用保険資格取得確認通知書) | 4年 | 完結の日(退職、解雇死亡の日) | 雇用保険法施行規則第143条 |
雇用保険に関する書類(被保険者関係以外の書類) | 2年 | 完結の日(退職、解雇死亡の日) | ||
社会保険 | 健康保険・厚生年金保険に関する書類(資格取得確認通知書、資格喪失確認通知書、被保険者標準報酬決定通知書) | 2年 | 完結の日(退職、解雇死亡の日) | 健康保険法施行規則第34条、厚生年金保険法施行規則第28条 |
労災保険 | 災害補償に関する書類 | 5年 | 災害補償の終わった日 | 労働基準法第109条 |
労災保険に関する書類(請求関係書類、支給申請書類) | 3年 | 完結の日 | 労働者災害補償保険法施行規則第51条 | |
労働保険の徴収・納付等に関する書類(保険関係成立届[控]) | 3年 | 完結の日 | 労働保険料徴収法規則第72条 | |
賃金関係 | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 | 7年 | 法廷申告期限 | 国税通則法第70~73条 |
源泉徴収簿 | 7年 | 法廷申告期限 | ||
賃金台帳 | 5年 | 最後の記入日 | 労働基準法第109条 | |
安全衛生 | 健康診断個人票 | 5年 | 作成日 | 労働安全衛生規則第51条 |
安全、衛生委員会議事録 | 3年 | 作成日 | 労働安全衛生規則第23条 |
注)2020年4月1日の労働基準法改正により、第109条にかかる記録書類の保管期限は、3年から5年に延長されています。ただし、経過措置として当分の間は3年が適用されます。
参考資料:改正労働基準法等に関するQ&A 令和2年4月1日 厚生労働省労働基準局(6ページ)
人事・労務関係書類|適切な保管のコツ
人事・労務関係の書類とは、そのほとんどが個人情報にあたるため慎重な取り扱いが求められます。セキュリティ管理された安全な状態で保管しましょう。
【紙の人事書類:保管のコツ】
・保管棚に鍵をかける
・書類保管スペースには限られた人間しか入れないように鍵をつける
・書類保管室の入退室記録をとる(入退室記録システムの利用)
・セキュリティ管理された書類保管サービスに預ける
書類は保管期間が過ぎたらまとめて廃棄できるように、保管期間が同じか近いものをまとめて保管しておくとよいでしょう。
ただし、人事・労務関係の書類は「完結の日」である退職日が起算日になるものも多く存在します。従業員を個別に管理し、その中で保管期間ごとにまとめておく方が効率的です。
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【電子データ書類の場合:保管のコツ】
・閲覧制限をかける(アクセス権を限定する)
・データにパスワードをつける
2019年4月に施行された労働基準法施行規則により、労働条件通知書は電子交付が可能になっています。電子化が可能な書類はなるべく電子に移行しましょう。
参考資料:https://www.mhlw.go.jp/content/000481172.pdf
保存義務のない書類の取り扱い
法的な定めがなく、保存義務がない人事書類であっても適切な管理と慎重な取り扱いが求められます。不適切に扱えば情報漏えいや法的なリスクが発生する可能性があるためです。
【保存義務のない人事書類(例)】
給与明細/過去の社員の履歴書/面接評価シート/就業規則/各種規程 など
これらの書類は、使用目的が終わった段階で適切な方法で廃棄します。個人情報を含む場合は、機密文書処理サービスを利用するなどして、確実に処分しましょう。
独自の保管ルールを設定
保存義務がない書類は、自社独自のルールを設けて管理することが推奨されます。例えば、書類を「短期」「中期」「長期」と分類し、各分類に応じて管理・処分の基準を決める方法があります。
短期保管書類は1カ月後、中期は3カ月後、長期は1年後に処分の可否を見直すなど、保管ルールを設けることで、書類の誤廃棄を防ぐとともに、必要時に迅速に取り出せる状態を保つことができます。
こうした管理ルールは全社的に統一し、全従業員に周知徹底することが重要です。部署ごとにルールが異なると、書類の所在や処分方法に不備が生じ、トラブルの原因となりかねません。
BODの「スキャン代行」サービスなら、現状の書類の量や保管状況を丁寧にヒアリングし、スキャン処理後の保管、廃棄に至るまで、お客様のご要望に寄り添う書類管理方法をご提案いたします。
どうぞお気軽にご相談ください。 →→→ お問い合わせはこちら
保管期間が過ぎた人事書類の扱い
保管期間が過ぎた人事書類の取り扱いは、企業にとって重要な課題です。適切な処理を怠れば、個人情報漏えいや法的問題を引き起こす恐れがあるからです。
廃棄の手順
例えば、5年間の保管が義務付けられた書類の場合、6年目以降に廃棄します。こうすると他の重要書類の保管スペースを確保できます。
保管と廃棄のサイクルを回すように、保管期限の過ぎた書類は積極的に廃棄し、管理業務を効率化しましょう。
廃棄時の注意点
人事書類を廃棄する際には、情報漏えいを防ぐための対策が不可欠です。人事書類には多くの個人情報が含まれており、不適切な処理は法的なトラブルを招く可能性もあります。
これを防止する対策として、シュレッダーや機密文書の溶解処理サービスなど専門業者の利用があります。適切に処理することで企業の信頼性を維持でき、コンプライアンスの確保につながります。
人事書類保管の負担を軽減する方法
多くの企業にとって、人事書類の保管は大きな負担です。本章では、その負担を軽減し、効率化する方法を3点ご紹介します。
ExcelやGoogleスプレッドシートの活用
ExcelやGoogleスプレッドシートは、データの整理や検索がしやすく、共有機能も備わっているため人事書類の効率的な管理に役立ちます。例えば、従業員データを入社日、退職日を含めてまとめておけば、人事・労務関係書類の保管期限も一目で分かり、業務効率化が期待できます。
人事労務SaaSの利用
人事労務SaaSを活用することで、クラウド上でのデータ管理や自動化が可能になり、手作業の負担が軽減されます。給与計算や勤怠管理などがシステム化され、人事情報の一元管理が可能になることで、書類保管業務の大幅な効率化が見込めます。
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紙書類の電子データ化
人事情報のデジタル管理だけでなく、紙書類をスキャニングしPDFなどの電子データとして保存する方法もあります。
紙の書類を減らし、ペーパーレス化することで、物理的な保管スペースが不要となり、オフィスの省スペース化が実現します。また、電子データであれば、書類の検索性が上がり、業務のスピードと精度が格段に向上します。
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【事例】過去の人事データ書類のスキャン→仕分け→原本の保管/廃棄
1)過去の人事データ書類を保管場所からBODへ発送
2)BODにてスキャンし、PDF化
3)年度ごとにデータファイルを仕分け、命名(リネーム)
4)電子データをご指定の方式にて納品
5)書類の原本処理
各人事書類ごとに法令で定められた保管期間に基づき分類
6)保管期限内の書類をBODの物流倉庫にて保管の手配
7)当時点で保管期間の過ぎている書類は廃棄処分の手配