年々深刻化する人手不足の課題や社内体制の見直しといった理由から、「できるだけコスト負担を少なく、自社に合う人材を集めたい」「外部サービスを利用して業務改善を行いたい」と検討されることはないでしょうか。
限られた予算の中で人的リソースを有効に活用するには、業務委託と人材派遣の2つの選択肢が考えられます。当記事では、業務委託と人材派遣の基本的な違いや特徴を解説し、メリット・デメリットを考察します。企業が最適な外部人材活用方法を見出し、業務効率の向上や課題解決に役立てることを目指します。
業務委託と人材派遣:基本的な違い
業務委託と人材派遣は、企業の人材活用方法として広く知られていますが、「両者の違いがよく分からない」「自社ではどちらの導入が適しているのか」など、迷う方も多いのではないでしょうか。特に、オンサイト型(現地で行う)の業務委託の場合は、‟自社内で”スタッフが業務を行うという面で、人材派遣と同じように見えます。
この章では、契約形態、利用目的、指示系統の違いに焦点を当て、具体的に両者の違いを説明します。
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契約形態の違い
業務委託と人材派遣の大きな違いは「契約形態」にあります。
【業務委託】 | 【人材派遣】 |
自社と受託会社で「業務委託契約(請負・委任/準委任)」を締結します。その内容は、「受託会社に納品物(成果物)の制作または業務の遂行を一任すること」になります。 | 自社と人材派遣会社(派遣元企業)が「労働者派遣契約」を締結します。その内容は、「人材派遣会社が雇用している派遣スタッフを自社で就業させること」です。 |
「Webサイト制作」を例に挙げると、業務委託の契約形態においては、Webサイト制作の完了が契約終了となります。対照的に、人材派遣の場合は派遣スタッフが一定期間、例えば3カ月間働き、Webサイト制作業務を行うことが契約の終了条件となります。
この違いが存在するため、業務委託は成果物ベース、人材派遣は労働時間ベースの契約形態となります。
利用目的の違い
業務委託と人材派遣は、それぞれ利用目的も異なります。適切な利用目的を理解することで、業務委託と人材派遣の選定を効果的に行うことができます。「システム開発プロジェクト」の遂行を例に挙げて、違いを説明します。
【業務委託】 | 【人材派遣】 |
委託した業務の遂行、成果物の納品、サービスの提供を目的とします。「システム開発プロジェクト」の場合には、受託者による開発完了という成果物の納品が主な目的となります。 | 労働力の確保として、人材の一時的な補充やスキルセットの活用を目的とします。プロジェクト期間中のスタッフの補充や専門スキルを持つ人材の一時的な確保が目的となることが一般的です。 |
業務指示系統の違い
業務委託と人材派遣の大きな違いの一つに、「業務指示系統」があります。これは、業務の遂行に直接影響を与える重要なポイントです。
【業務委託】 | 【人材派遣】 |
業務委託先の企業が、業務の進行方法やプロセスを自主的に決定します。オンサイト型の業務委託の場合、自社に委託先のスタッフが常駐して作業を行っていても、直接業務指示をすることはできません。 | 指揮命令権は、派遣先の企業に存在します。つまり、派遣スタッフに従事してほしい業務について、直接指示をすることができます。 |
業務の遂行、進捗管理の違い
業務の遂行、進捗管理の方法も、両者で異なります。
【業務委託】 | 【人材派遣】 |
業務委託先企業が、自社のプロジェクト管理ツールやマネジメント手法によって進捗を管理します。これは委託先が全責任を持って業務を遂行するためです。業務の遂行方法が委託先に一任されるため、プロジェクトの進め方や納期の管理方法などが自社で従来行っている方法とは異なる場合があります。 | 派遣社員は派遣先企業の社内ルールや管理システムに従って業務を進行します。派遣先での指示に従い業務を遂行するため、業務フローの指令系統や進捗管理等の徹底が必要となります。 |
このように、指示系統、業務の遂行や進捗管理の違いまでしっかり理解することが、どちらの形態を選ぶかの重要なポイントとなります。適切な活用法を選ぶことで、自社業務の効率化や品質向上を実現することが可能です。
※BODによる「オンサイト業務委託 / 人材派遣」の場合
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業務委託と人材派遣それぞれのメリット
業務委託と人材派遣の違いを述べてきましたが、メリットもそれぞれに異なります。業務委託のメリットとして、専門的なスキルの活用や業務フローの改善があります。一方で、人材派遣のメリットには、即戦力としての人材活用や短期間での採用が挙げられます。組織のニーズに合わせて最適な選択をするためには、それぞれのメリットを理解することが重要です。
業務委託のメリット3点
専門的な知識や技術の活用
業務委託を利用するメリットの一つに、専門性に特化した外部企業の活用があります。例えば、顧客対応などは自社で対応することも可能ですが、その都度の対応になってしまい、顧客の満足度向上までつなげられるかどうか分かりません。
自社で対応するよりも、コールセンターやコンタクトセンターの運用を行う専門企業に委託し、そのノウハウを活用することで、社内リソースの確保ができます。さらに、質の高い顧客対応が実現でき、顧客満足度の向上につなげることができます。
業務フローやオペレーションの改善
社員が日々の業務に追われていると、業務内容のマニュアル化や、分かりづらい業務フローの改善、体制構築まで手が回らず後回しになってしまうことが想定されます。業務委託を活用する場合、委託する外部企業によっては、業務調査から始まり、業務の可視化・マニュアル化まで行ってくれる場合があります。それにより煩雑だった業務フローやオペレーションが改善し、業務の標準化が実現します。
コア業務、強化部門へのリソース集中
ビジネス環境の変化が著しい時代には、新規事業の立ち上げや短期的プロジェクト、強化する業務が発生することがあります。
これらへの対応のために一から社員を確保することは企業にとってリスクが大きいと言えます。必要な人材を確保できるかも明確ではなく、機会損失につながってしまう可能性もあります。
業務委託の形態を選ぶことで、リソースを集中し、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最適化できます。
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人材派遣のメリット3点
専門性の高い人材を必要な時に活用できる
人材派遣では、業務内容や期間など必要に応じて専門性の高い人材を活用することができます。正社員として雇用する場合、長期的に人件費が発生しますが、例えばITプロジェクトや専門的な業務に特化したスキルを持つ人材を短期間だけ雇用する際、人材派遣はコストパフォーマンスが非常に高いと言えます。
人材派遣会社にはさまざまな経験やスキルを持つスタッフが登録しているため、自社が必要とするスキルを持った人材の受け入れが可能です。
短期間で即戦力人材を確保できる
人材派遣では、急な業務量の増減に迅速に対応できる点もメリットに挙げられます。募集から採用までのリードタイムが短縮されるため、繁忙期や特定プロジェクトのために短期的に増員する必要がある場合でも、即戦力となる人材を素早く確保することができます。例えば新規事業の立ち上げ時など、社員が通常業務と追加業務を兼任しなければならない状況でも、人材派遣の利用により自社従業員の業務負担を軽減し、本来の業務に集中させることができます。
人材の育成、労務管理の負担軽減
自社で社員を採用する場合、募集から書類選考、面接、採用などの採用活動や、入社後の教育、研修が必要です。人材派遣の場合、派遣会社が自社の要望に合う人材をコーディネートしてくれるため、このような負担はありません。
また、派遣スタッフの労務(給与計算や支払い)、各種社会保険の加入手続きなどは派遣元である人材派遣会社が対応します。そのため、これら人事労務業務に対応したり責務を負ったりする必要はありません。労務管理の負担が大幅に軽減されることも大きなメリットです。
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業務委託と人材派遣それぞれのデメリット
業務委託と人材派遣にはそれぞれメリットがありますが、デメリットも存在します。本章では、これらのデメリットについて詳しく解説します。
業務委託のデメリット2点
●進捗管理のコントロールが難しい
業務委託には、業務の進捗管理のコントロールが難しいというデメリットがあります。業務委託の場合、委託先企業が独立して業務を行うため、企業側は細かい指示を出しづらくなります。例えば、ソフトウェア開発を業務委託した場合、開発の進行状況や品質のチェックがリアルタイムで行えないことがあります。
●期待した成果が得られないリスク
成果に対する保証がないというデメリットも考えられます。業務委託契約では、企業側に期待した成果物が得られないリスクが残ります。例えば、マーケティング業務を委託しても、結果として売り上げが予想に届かない場合、その努力や費用が無駄になることもあります。成果物の品質や期限が約束されないことは、業務委託を選択する際の注意点と言えるでしょう。
人材派遣のデメリット2点
●長期的にはコスト高騰の可能性
派遣社員を雇用する際には、派遣会社に対する手数料が含まれるためコストが高くなる可能性があります。手数料が積み重なると、長期的には企業にとって大きな負担になることがあります。特に専門スキルを持った派遣社員の場合は単価が高くなるため、総コストがさらに上昇しがちです。派遣期間が長期間に及ぶ場合、そのコストは一層膨らみます。
●派遣社員のレベルに差がある
派遣社員のモチベーションやスキルにばらつきがある可能性も無視できません。派遣社員は通常、短期間の勤務が多く、正社員と比べて企業へのコミットメントが低いことが一般的です。そのため、モチベーションやスキルセットにムラが生じやすくなります。例えば、次の派遣先を探している状態のスタッフに業務への集中力低下が見られたり、スキル不足によって求める業務の質に達していないケースもあります。
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向いている業務と適切な活用シーン
業務委託と人材派遣では、契約形態によって、向いている業務と適した活用シーンがあります。業務委託は専門能力や技術が求められるプロジェクト向きである一方、人材派遣は即戦力となる人員が必要な状況に適しています。それぞれの適した業務や活用シーンを具体的に解説していきます。
業務委託が適しているシーン
業務委託では、専門的なスキルや知識を持った外部の専門家を契約に基づいて一時的に利用することができるため、効率的かつ費用対効果が高いと言えます。
例えば、ITシステムの開発やデザイン、マーケティング戦略の立案など、特定分野における高い専門性が求められる業務、プロジェクトにおいて非常に有効な手段となります。
自社内で人材を育成することなく、高度な専門知識やスキルが得られるため、自社のリソースを他の重要な業務に集中させることが可能です。例えば、新製品の開発時におけるプログラミングや、高度な分析を必要とするマーケットリサーチなどが該当します。これにより、プロジェクトの迅速な進行が実現でき、競争力を高めることが期待できます。
人材派遣が適しているシーン
人材派遣が適しているシーンは、短期間で大量の労働力が必要な場合です。即戦力となる労働力を迅速に確保できるため、突発的な需要や一時的な人手不足を補うことが可能です。
例えば、大規模なイベントや季節ごとの繁忙期において、多くのスタッフが短期間で必要になる場合に適します。
また、特殊なスキルを持つ人材が一時的に必要な場合も、人材派遣は有効です。人材派遣では特定のスキルや経験を持つ専門職もアサインできるため、特定のプロジェクトやタスクに対応する際に役立ちます。例えば、ITプロジェクトでプログラミングスキルを持つエンジニアが一時的に必要になる場合、専門的な人材を迅速に派遣してもらうことが可能です。
自社の事情に合わせた活用で人的リソースを最適化
業務委託と人材派遣は、それぞれの契約形態に特有のメリットとデメリットが存在し、業務の性質や目指す成果によって適切な選択が異なることは、ここまで述べてきた通りです。
例えば、プロジェクトベースで専門的なスキルを必要とする場合は業務委託が適している一方、短期間で即戦力が求められる場合は人材派遣が有効です。自社の課題に最も適した契約形態を選ぶことで、効率的かつ効果的に業務を進めることができます。
自社の課題やニーズをしっかりと分析し、その状況に合わせた契約形態の選定を行いましょう。人的リソースを最適に活用してこそ、業務効率の向上や課題解決につながるのです。
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業務プロセスの設計、マネジメントから委託することをご検討される方は、
BODの「オンサイト業務委託」も合わせてご覧ください。