BCPとは、災害など緊急事態における企業や団体の事業継続計画のことです。地震や豪雨など、大規模な災害が毎年のように発生する日本。2024年1月1日には能登半島でM7.6の地震が起き、大きな被害をもたらしました。BCP対策は、災害時において被害を最小限に抑え、事業を継続するために必要とされます。本記事では、BCPの目的と意義、策定方法について解説します。
BCPとは?
BCP (読み:ビーシーピー) | Business Continuity Planの略、「事業継続計画」の意味 |
BCPとは、災害によって危機的状況下に置かれた場合でも、特定された重要な業務が継続できる方策を準備することを言います。万が一、事業活動が中断した場合には早期復旧させ、業務中断に伴うリスクから企業を守るための経営戦略を示す計画のことです。
BCP対策とは具体的に、災害時のバックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などを実施することを指します。
BCPはもともと、イギリス、アメリカで1970年代ごろから広まった概念です。2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロを機にその重要性が世界的に認知されました。日本では、2011年の東日本大震災をきっかけとして、ますます注目されるようになっています。
【参考】内閣府:防災情報のページ
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BCPとBCMの違い
BCPと混同されやすい言葉に「BCM」があります。BCMとは、Business Continuity Management の略で、事業継続マネジメントと訳されます。BCPが事業継続プラン、計画を指すのに対し、BCMはその計画を運用・管理する仕組みのことです。
BCPを策定しても、うまく活用できなければ‟計画倒れ”となってしまうため、近年では、BCPの見直し、改善といった管理プロセス全般を指すBCM、‟マネジメント”の観点が重要視されています。
BCP対策と防災対策の違い
防災とは、災害対策基本法により「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ること」と定義されています。ここで言う災害とは地震や暴風、豪雨といった自然災害を指します。一方、BCPは自然災害を含めたすべての非常時を想定して対策を講じることを指します。
防災対策の目的が、人命や建物、国土といった財産を保護することにあるのに対し、BCP対策の目的はあくまでも「事業の継続」にあります。
BCP対策とDCP対策の違い
DCPとは、District Continuity Plan の略で、地域継続計画と訳されます。
災害発生時に、優先的に復旧するべき施設・設備を‟地域で”あらかじめ合意形成のうえ決定し、発災直後から迅速に、組織の壁なく行動できるよう定めた計画のことです。
一方、BCP対策は、‟企業単位で”優先的に復旧する事業やシステムを定めた行動指針です。
東日本大震災の時点で、上場企業や各自治体の一部ではすでにBCP対策を導入していました。しかし、あまりにも広域かつ多くの重要な施設、設備が機能停止に陥ったため、策定していたBCP対策はほとんど役に立ちませんでした。このことから、“地域間で”対策を講じる重要性が注目され、DCPの概念が生まれたのです。
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BCPの目的と意義
災害と一口に言っても、地震や台風などの自然災害だけでなく、テロや戦争、コロナウイルス感染症などのパンデミック(世界的大流行)、サイバー攻撃によるシステム障害と多岐にわたります。BCPの目的とは、これらあらゆる災害によって危機的状況に陥っても、損害を最小限に抑えて事業を継続し、早期に復旧を図ることにあります。BCP対策とは「事業の継続」を明確な目的として、具体的な行動指針を示すことです。
企業が、緊急時にも事業を途切れることなく継続すること、たとえ途切れたとしても早期に復旧すること。これが実現できれば、顧客、株主などステークホルダーからの信用を維持し、企業価値の向上につながります。ここに、BCPを策定する意義があるのです。
BCP策定の具体的な手順とその実施方法
災害は、いつ発生するか予測できません。いざ災害に巻き込まれたときにBCPが策定中、検討中では、事業継続は非常に危ういものです。内閣府ではBCP策定を強く推奨し、「事業継続ガイドライン」を公式サイトにて公開しています。企業はBCPの策定を喫緊の課題とし、いつ災害が起きても対応できるよう平常時にBCPを策定しておく必要があります。
【参考】事業継続ガイドライン|内閣府防災担当(令和5年3月)https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf
では続けて、BCP策定の具体的な手順と実施方法について述べていきます。
策定の目的と基本方針を決定する
BCP対策を行うことで何を目指すのか、まずは基本方針を立てます。方針決定には、企業理念や経営方針といった経営者の意思が大きく関わります。「事業の継続」が第一目的であることを念頭に置きながら、従業員の命を守るため、供給責任を果たすため、クライアントからの信用を守るため、自社の事業に照らし合わせて策定の目的を定めましょう。
想定されるリスクを洗い出す
想定される自然災害やテロなどのリスクを洗い出し、発生時の自社への影響を分析します。リスクを明確にできないと、有効な対策を導き出すことはできません。例えば、地震や火災が発生し工場停止による供給停滞、サプライチェーンの寸断、水害の発生しやすい地域にある営業所が受けるダメージ、サイバーテロによるシステム障害など。これらの災害を想定し、事業に及ぼす被害を具体的に洗い出していきます。
中核事業を選定する
災害時に、優先的に継続させる「中核事業」を選定します。例えば、売上が最も大きい事業、供給遅延が及ぼす影響が甚大な事業、ステークホルダーの信用維持のために重視される事業などです。有事の際、対応できる人員や設備といったリソースが極めて少ない状況下でも継続させるべき事業は何かという視点で優先順位を決めます。
実現可能な具体策を決める
中核事業の復旧に必要なリソース(ヒト、モノ、資金など)の種類、それを確保するための方法を具体的に策定します。これには事業提携先、取引先との調整も必要になるでしょう。
また、誰が指揮を執り、誰がその指示を受けて実際に行動するのかといった指示系統、情報発信の方法も決めておく必要があります。起こり得る災害に対して詳細に内容を策定しておかないと、非常事態下でとっさに対応することは困難です。
計画内容をもとに訓練する
BCPを策定したら、その計画内容をもとに訓練することも重要です。具体的な訓練方法を列挙します。
【訓練の方法】
・策定したBCPの内容を社員全員に周知、教育する
・万が一の際、計画通りに進められそうかシミュレーションしてみる
・安否確認のための連絡網が機能するか、実際に連絡を取り合ってみる
・代替となる営業所や工場などに人員がスムーズに移動し、作業できそうか実行してみる
・普段使用している本システムの停止を想定し、バックアップデータからの取り出しを試してみる
・自治体が実施している防災訓練に参加する
※BCPの策定には、中小企業庁のWebサイト「中小企業BCP策定運用指針」から、様式類をダウンロードできます。
※計画書をデジタルデータで作成したら、それを印刷し、紙の書類としても保管しておきましょう。これこそが災害に対する‟備え”と言えますね。
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BCPを有効に機能させるために必要な観点
BCPをせっかく策定しても有効に機能しないケースも見受けられます。これは、策定した内容自体の不備、時間の経過による実態の変化などが原因として考えられます。必要なタイミングで確実に機能させるために、以下の観点に基づき内容を見直しましょう。
人的リソースの観点
従業員の安否確認、被災状況を把握する手段、少人数でのオペレーション方法、出社できない従業員の対応
施設・設備の観点
社屋や生産工場など施設、内部設備の損壊を想定した代替手段の準備
資金の観点
被災期間の事業資金に相当するキャッシュフローの確保、保険による損害補償や公的融資制度の把握
指示系統・体制の観点
指揮者が不在となった場合に代行する人員の選定、指示系統の構築
情報の観点
業務上必要なデータのバックアップ、クラウド化、広域災害に備えた遠隔地でのバックアップ
BCP対策の重要性
BCP対策とは、計画を策定して終わりではありません。毎年のように起こる災害を教訓とし、日々変化していく現状を把握した上で、次の戦略へと結びつけるよう更新していくことが重要です。一連の流れを踏まえた計画書を作成し、PDCAを回しながら常に改善していきましょう。
2024年は、能登半島の地震から始まりました。今後10年、20年と長く企業活動を存続していく上で、何かしらの災害に巻き込まれる可能性は高いと言えます。
有事の際に事業が破綻してしまっては顧客や取引先からの信用を失うばかりか、従業員を守ることもできません。たとえ一時的でも事業が中断することによって、市場競争力が低下し、事業の縮小や倒産に追い込まれることもあり得ます。つまり、BCP対策は企業の存続にかかわる最重要項目とも言えるのです。
備えあれば憂いなし。いざというときにも事業を継続するために、BCP対策がまだであれば策定への一歩を、対策済みであれば今一度改善点がないか見直しを進めましょう。
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