国際女性デーは、女性の社会参加や権利向上を呼びかける日です。女性の社会参加と深く関係する「産休・育休」制度ですが、日本の育児休業制度は、なんと世界評価1位。育児休業の取得率や、取得にあたっての課題に目を向け、企業にできる対応策としてアウトソーシングの有用性について考えてみます。
国際女性デーとは?
3月8日は国連が定めた「国際女性デー(International Women‘s Day)」です。女性の社会参加や権利向上を訴える日として、国際婦人年である1975年3月8日に提唱され、1977年に国連総会で正式に議決されました。
近年、日本でもその存在が認知され始め、3月が近づくと各地で女性の権利についてのワークショップやイベントなどが開催されるようになっています。また、国際女性デーは、SDGs「5.ジェンダー平等の実現」や女性の活躍推進について考えることも推奨されています。女性が働きやすい環境整備など、さまざまな取り組みを進める企業も増加しています。
国際女性デーの3月8日は「ミモザの日」とも言われ、春を告げる黄色いミモザの花がシンボルフラワーとして親しまれています。この日に、男性から日頃お世話になっている女性へ感謝を込めてミモザを贈るというイタリアから始まった風習も世界中に広まってきています。
日本の育児休業制度は世界1位
女性の社会進出と深く関係する「産前産後休業・育児休業」制度。国際的に見て、日本の育児休業制度はどのような位置付けにあるでしょうか。
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)の報告書「先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)」では、経済協力開発機構(OECD)および欧州連合(EU)加盟国を対象に、各国の保育政策や育児休業政策を評価し順位付けをしています。
評価の指標は、Leave(育児休業)、Access(学齢期までの子どものための保育サービスへの参加率)、Quality(保育の品質)、Affordability(保育料金の手頃さ)の4つ。総合評価では、ルクセンブルク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェーといった北欧の国々が上位を占めており、日本は21位です。
ただし、育児休業制度(Leave)に限れば、日本の評価はなんと1位! 父親に認められている育児休業の期間が最も長いこと、育休中の給付金額が他国よりも多いことがその理由です。同報告書では、取得率は低いものの改善に向けた取り組みが進められていること、保育従事者の社会的立場の低さについても言及されています。
【出典】ユニセフ「先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)」
【参考】男女共同参画局 男女共同参画白書 令和5年度版「コラム4 我が国の育児休業制度は世界一!?男性の育児休業の変遷と背景」
(表1)https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/zuhyo/zuhyoc04-01.html
育児休業取得の現状と課題
世界的に評価が高い日本の育児休業制度。その取得率や実態について考察します。
育児休業の男女別取得率
男女共同参画白書(令和5年版)によると、2021年度の育児休業取得率は、男性(民間企業)13.97%、女性(民間企業)85.1%です。男性の育休取得率向上については、育児・介護休業法の改正など国を挙げた取り組みがなされていますが、依然として女性側に子育ての負荷がかかっていることがうかがえます。
【出典】男女共同参画白書 令和5年版「特-18図 育児休業取得率の推移」
育児休業取得の課題
育児休業制度は整っていても、育休を取得する当人が抱く懸念も見過ごすわけにはいきません。厚生労働省によって「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」が継続して行われており、この調査報告書から育休取得の際の気がかりや不安感を読み取ることができます。
【育休取得者が感じる懸念】
・負担をかける同僚への申し訳ない気持ち
・育休取得前のポジションの保証
・昇給や昇格などキャリア形成の停滞(マミートラック)
【マミートラックとは】
産休・育休から復職した女性が、自分の意思とは無関係に職務内容や勤務時間が変わったり、その結果社内の出世コースから外れていったりする事象を指す言葉。昇格や昇進から外れて働く意欲を失い、競技用トラックで周回しているような感覚に陥っているといった状況を表しています。
一方、企業側においても、育休取得者の穴埋めは容易ではない、即戦力となる人材がすぐに見つからない、育休取得者の同僚に少なからず負担がかかる、といった懸念により従業員の育休取得をすんなりとは受け入れられないジレンマもあるでしょう。
【参考資料】厚生労働省委託事業「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 ~仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書~」
企業にできる対応策
育児休業を取得する本人、同僚、誰もが快く安心して‟育児休業”を受け入れるためには、対象者へのフォロー体制の構築、雇用環境整備が重要です。企業にできる対応策について説明します。
業務の棚卸し、スリム化
従業員が育休を取得することになったら、まず当人の従事する業務について、現在の体制でどの程度カバーできるかを検討しましょう。その際、部署全体で業務の棚卸しを行うことをおすすめします。育休を取得する従業員の業務引き継ぎは、業務効率を見直すきっかけとなり、結果的に業務のスリム化にもつながります。
負担減となるコスト、助成金の活用
従業員が育児休業を取得した場合、事業者はその対象者に給与を支払うことはありません。育休取得者には、給与の代わりとなる「育児休業給付金」が支給されますが、この財源は雇用保険のため企業側の負担はないのです。また、育休中は社会保険料の支払いが労使ともに免除、給与がないため雇用保険料も発生しません。
例えば、月給30万円の従業員の場合、企業側の月額負担は社会保険料およそ15%(45,000円)を加算し約35万円です。当人が6カ月間育児休業を取得すると、35万円×6カ月=210万円の費用負担がなくなる計算です。
この負担減となったコストを育休取得者の代替要員となる人件費や教育研修費等に活用することができます。
また、厚生労働省による「職業生活と家庭生活の両立支援策」といった助成金制度を利用する方法もあります。中小企業事業主を対象とした支援コースには、育休取得時、業務代替支援、職場復帰後支援など、さまざまなプランが用意されています。要件により数十万円が支給されるため、有効活用しましょう。
【参考】厚生労働省「2023年度 両立支援等助成金のご案内」
負荷がかかる同僚社員の応援
育休を取得する社員の業務を引き継ぎ、負担が増えた同僚に対して“応援手当”、インセンティブを支給する企業も増えています。また、政府は2024年度から、育児休業者の仕事を代替する同僚に手当を支給する中小企業を対象に助成額を拡充するとしています。
民間企業の実例として、大和ハウスグループの大和リース株式会社は、2023年12月に「育児休業を支える同僚への賞与『サンキューペイ制度』を導入する」と発表しました。育休取得者へ支払う予定の賞与原資を同僚やチームへ再分配する仕組みで、正社員のほか契約社員などを含む全従業員を支給対象としています。
フォローする従業員へ相応の手当を支給することで、育休取得者が抱える同僚への「申し訳ない」といった気詰まり感をやわらげます。また、これによって職場全体の納得感、一体感を高める効果があるとも想定されています。
BPO、アウトソーシングの有用性
ここまで、育児休業取得による課題、企業にできる対応策について述べてきました。
育休取得による一番の課題は「欠員による職場の負担増」になりますが、これにはBPOサービス、アウトソーシングが有用だと考えます。
業務委託は、前述した業務のスリム化、人的コストの活用に有効なことはもちろん、育休取得当人のノンコア業務をアウトソースすることで、残った人員はコア業務に集中することができます。育休取得期間だけ利用することで、当人の職場復帰に向けた「戻るポジションがあるのか」といった不安感も少なからず解消されるはずです。
女性が出産や育児といったライフイベントと両立し、安心して働ける環境づくりのために、BPOサービス、アウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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